所得税額 = (所得金額 - 所得控除) × 税率
前回の内容で上の計算式を書きましたね。
この計算式のうち法律で定められている税率と、企業が支払った給料の金額である所得金額は会社で把握できていますが、所得控除について会社は把握していません。
個人で支払ったものが所得控除になってくるのでそれは当然ですね。
ですので会社が把握できるように所得控除がわかる(計算できるように)書類を会社に対して提出する必要があります。
1.年末調整の流れ
1.年末調整の為の書類を会社に提出する
2.その書類を元に会社は従業員それぞれの正しい所得税額を計算する
3.会社は従業員に対して払い過ぎた税金を還付する
というのが年末調整の流れになります。
2と3は会社側が行う作業ですので、従業員である皆さん的に大事になるのは1番ですね。
さて、この「年末調整の為の書類」とは一体何か。
この時提出する書類が「給与所得者の保険料控除申告書」「給与所得者の配偶者控除等申告書」「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という3種類の用紙です。
もう一つ「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」という書類もあるのですが、こちらは確定申告で事前に住宅借入金等特別控除の適用を受けなければならないといけないので、今回は説明から省きます。
この3枚は入社したての頃は記入することもなく白紙で提出するという人も多いですが、
結婚して子供を持ち、そして老後や病気に備えて保険に加入するとなると記入することが多くなりますね。
多くなるというか記入しないと丸損ですから書かなければならない、と断言しますが。
ちなみに所得控除は他にも様々な種類がありますが、年末調整で提出出来るのはこの3枚のみです。
ほかの所得控除については確定申告にて行う必要があります。
では、順番に軽く説明していきましょう。
2.給与所得者の保険料控除申告書
3枚のうちの1枚「給与所得者の保険料控除申告書」ですね。
その名の通り所得から控除できるもののうち、保険料に関するものを記載する用紙です。
「私はこれだけの保険料を支払っているので、所得からこれだけ控除します」と申告する用紙ということですね。
控除できる保険料等は
1.生命保険料控除
2.地震保険料控除
3.社会保険料控除
4.小規模企業共済等掛金控除
の4つに分けられます。
2-1.生命保険料控除
「知ってる保険会社の名前挙げてみて?」って言うと挙げられた会社のほとんどが取り扱ってます。
この生命保険料控除はさらに3つに分けられており
一般の生命保険料
介護医療保険料
個人年金保険料
と分けられます。
この3つの区分それぞれ最高4万円まで、合計で最高12万円が生命保険料控除になります。
ただこの「最高4万円」というのは支払った金額のことではないことに注意してください。
「一般生命保険料」と「個人年金保険料」に「新・旧」と別れていますが、
これは保険料の制度が24年1月1日から改定されており、その日を1月1日から契約した人は新制度、それ以前は旧制度という区分になっています。
ちなみに旧制度には「介護保険料」という区分がなく、それぞれ最高5万円、合計最高10万円まで控除でした。
2-2.地震保険料控除
丁度今値上げについて話題になっていますね。
この保険は建物に対してかける保険で、地震や、地震を原因とする火災による建物の損害に対しての保険です。
(あくまで地震というのがポイントの保険です!)
地震保険料控除は最大5万円ですね。
これもまた「地震・旧長期」の2つの区分に分かれていますが、旧長期というのは平成20年に廃止された損害保険料控除というのを指すようですね。
今回は年末調整なので関係ありませんが、不動産や農家やってる人ですと結構この地震保険に入る人は多いですね。
2-3.社会保険料控除
保険料控除は会社の給料から天引きされる厚生年金等の社会保険料も含めます。
が、それは記載する必要はありません。
あくまであなた個人で支払ったものを書きましょう。
私はこれについてよくわかりません(お前
2-4.小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済刀掛金は自分でかける退職金だそうです。
私はこれは更によくわかりません(お前
地震保険料と社会保険料は後日改めて追記しようと思います。
これら4つの保険料の控除照明については遅くとも11月末までには各保険会社から控除証明書が届きますし、
それを見れば支払った年間の保険料の金額(加入したばかりなら見込みの支払い金額)、新旧の区分や医療費控除、介護保険料などと書かれているのでわかりやすいと思います。
わからなければ各保険会社のホームページに記載がありますので調べてみると良いですね。
3.給与所得者の配偶者控除等申告書
3枚のうち2枚目、「給与所得者の配偶者控除等申告書」です。
配偶者がいる場合に所得金額から控除出来るもので、保険料控除と異なりお金を払っていたりする必要はありません。
ただし大前提として所得金額が1000万以下であること、
そして夫婦共に所得がある場合に、お互いを配偶者として申告出来なかったり
給与所得者(あなた自身)の所得金額及び配偶者の所得金額によって配偶者控除の金額が変わってきます。
3-1. 配偶者控除を申告できるのは夫婦のどちらかのみ
見出しの文面ままですが、夫婦でお互いを配偶者として控除を受けることは出来ません。
夫が妻を配偶者として申告した場合、妻は夫を配偶者として申告出来ないわけです(その逆も同様)。
言ってみれば「私は妻(夫)を金銭面で養う立場である為、配偶者控除を受けます」という申告なわけですね。
「いや、妻(夫)は働いてないけど貯金滅茶苦茶あるから実際は養われてるよ?」って人も少なからずいるかもしれませんが、
「ワシの方が稼いでるんじゃい!」と自信をもって申告しましょう。
以下控除を受ける人(養う側の人)を「給与所得者」、そしてその配偶者を「配偶者」と分けて記載していきます。
3-2.配偶者控除の金額が変わる条件
さて、上で書いたようにまず大前提として給与所得者の所得金額が1000万円以下です。
そして配偶者控除の金額は給与所得者の所得金額と、配偶者の所得金額の両方が関わってきます。
金額が変わる条件は給与所得者の所得金額が
1. 900万円以下
2. 900万円超~950万円以下
3. 950万円超~1000万円以下
の3つに分けられます。
そして配偶者の所得金額はというと
1. 38万円以下かつ配偶者の年齢が70歳以上
2. 38万円以下かつ配偶者の年齢が70歳未満
の2つです。
つまり3x2の6パターンに分けられるわけですが、このブログを見てる人で70歳以上の配偶者を持つ人は珍しいでしょうし、実質3パターンですね。
「ん? あれ? 配偶者の所得金額が38万円以下ってことは超えたら控除金額がないの?」と思った方は正解です。
所得金額が38万円を超えると配偶者控除は貰えなくなります。
ただし、配偶者控除はなくなりますが配偶者特別控除というものがあります。
書類の名称が「配偶者控除等申告書」となっているのはそういうことですね。
3-3.配偶者特別控除
さて、この配偶者特別控除ですが、給与所得者の条件はそのままですので省くとして、
配偶者の所得金額が
1. 38万円超85万円以下
2. 85万円超123万円以下
の2種類に分けられています。
しかしこの2番の「85万超123万円以下」はさらに細かく分けられ
2-1. 85万円超90万円以下
2-2. 90万円超95万円以下
以下同様に5万円区切り……
2-7. 115万円超120万円以下
2-8. 120万円超123万円以下
となります。
それぞれ「○万円超○万円以下」ですので、数字で書くと1番なら「380,001円~850,000」ということになりますね。
ちなみにこの配偶者特別控除ですが昨年2018年に改正され、納税者側に有利になりました。
改正前は1番の「38万円超85万円以下」の区分がなく、いきなり5万円刻みで最大76万円未満という区切りだったので、かなり有利になったわけですね。
4.給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
最後に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
「扶」は助ける「養」は言葉通り養うを意味します。
では一体誰を助け養うのかというと自力で生活することができない人達です。
「自力で生活することができない」というのは収入がないからなのか、働ける年齢にないからなのか、あるいは心身的な障害があるからなのか等々理由は様々ですが、「給与所得者が誰を扶養しているのか」を書くのがこの扶養控除申告書なのです。
さてでは扶養される人達はどう分類されるかというと
1.源泉控除対象配偶者
2.控除対象扶養親族
3.障碍者・寡婦・寡夫又は勤労学生
ざっくりこの3つに分けられます。
「配偶者」「両親・子供等」「その他」ということですね。
4-1. 源泉控除対象配偶者
配偶者控除でも書きました配偶者のことです。
日本は一夫多妻制は認めていませんので枠は1つしかありません、オンリーワンです。
そしてここに書いておいて何ですが配偶者は扶養控除の対象になりません。
「意味が分からん! 配偶者は扶養じゃないの!?」と考えると思いますがご安心を、その為に配偶者控除があります。
対象にならない、というより配偶者控除が実質扶養控除と考えればいいかなと思います。
「配偶者は控除の条件がごちゃごちゃしてるから別紙に書こう!
別紙で扶養控除って書いたらややこしいから名前も変えて配偶者控除にしよう!」
と考えたら混乱しないのではないかな、と思います。
実際のところどういう理由かは知りませんが、まぁ間違えなければいいので。
4-2. 控除対象扶養親族
給与所得者に扶養される親族です。
「両親、子供等」とざっくり書きましたが、実際には
- 6親等以内の血族(給与所得者の両親、祖父母、曽祖父母及びそれらの兄弟等)
- 3親等以内の姻族(配偶者の両親、祖父母、配偶者の兄弟等)
- 子、孫、ひ孫
などが該当します。
これらの親族すべてが控除対象になればとんでもない控除金額になりますが、実際はそうはならないでしょう。
まず給与所得者と生計を一つにしている(一つの家で給与所得者の収入を頼りに生活している)必要があります。
そしてあくまで扶養対象ですので、自力で生活出来るほどの所得金額がない、具体的には年間合計所得金額が38万円以下である必要があります。
38万円というのは配偶者控除と同じ条件ですね。
もう一つ重要な条件があるのですが、今回は関係ありませんので書かないことにします。
- 6親等以内の血族、3親等以内の姻族、子、孫、ひ孫のいずれかに該当する
- 給与所得者と生計を一つにしている
- 年間合計所得金額が38万円以下
- (今説明するとややこしいので記載しない)
上記の3つ(実際は4つ)の条件を満たしてようやく扶養親族と認められます。
4-2-1.控除対象扶養親族になれるのは16歳以上の扶養親族のみ
これで扶養親族がわかりました。
それじゃあ全員控除対象扶養親族なのかというとそうではありません。
16歳以上の扶養親族が控除対象扶養親族となります。
そう、16歳未満の扶養親族、つまりバイト等も原則認められない自分で生活費も稼げない子供たちが控除対象と認められていないのです。
この文面の矛盾っぷりはなかなかのものですが、これもわけがあります。
4-2-2.こども手当
少々年数を遡って2010年、年少扶養控除が廃止、つまり15歳以下の扶養親族が控除対象から外れました。
それに代わって導入されたのが子ども手当(現・児童手当)なのです。
簡単に言うと「年少扶養控除廃止で損した分は、手当としてお金を支給しよう!」というものです。
大体の人は年少扶養控除分の所得税よりも手当の額の方が大きくなるので得することになります。
「得するのはいいけど、何でこんな面倒な制度にするんだろう?」と思うかもしれませんが、
所得税は「超過累進課税制度」という所得が増えれば増えるほど税率が高くなるようになっておりまして、一方でこの手当の額は一律です。
つまり所得金額が多くなればなるほど相対的に手当の額が少なくなりまして、そして「大体の人は得する」ということは……。
4-3.障碍者・寡婦・寡夫又は勤労学生
障碍者と言うと身体障碍者や知的障碍者をパッとイメージしますが、精神障害も含まれます。
有名なところではうつ病やPTSDなどですが、他の色んな種類を含めると日本人の20人に1人は潜在的精神障害とも言われていますね。
まぁ潜在的にそうであっても勝手に障碍者と名乗られても困るので、控除を貰うには当然医師の診断書が必要になります。
寡婦・寡夫というのは簡単に言うと離婚・死別(あるいは生死不明)によって配偶者がいなくなった扶養親族に該当する子持ちの人です。
ただし所得金額が500万円以下であることと、扶養親族に該当する子の所得金額が38万円以下である必要はあります。
さて、これで年末調整の話はおしまいです。
あくまで触りの内容だけのつもりですので、そこまで難しくはないつもりではいますが、わからなければコメント欄で聞いていただければと思います。
私も実はまだ勉強中の身ですので、間違っていることもあると思いますので。
ところで前回の源泉徴収の話と今回の年末調整の話の中で私はしきりに「所得金額」という言葉を出してきました。
この所得金額という言葉は実は「あなたの手元に入ってきたお金」を指していません。
更に言うと所得金額とは「給与所得を含めたあらゆる所得の合計」を指します。
この「所得金額という言葉が何を指しているのか」
そして「給与を含めた色んな所得の種類」について次回から順番に書いていこうと思います。